考察2:弓と矢飛び
  ---弓の構造から射を考える---
2007年春ごろ作成、時に応じて加筆修正
*私が使っているのは強い弓が得意と云われる『森茂夫』さんの弓です*
 他の弓と比較してみると、和弓は上が長く下が短い独特な構造で、角見を利かせ矢を押し出して飛ばす。上は撓りが大きく、下が短いため、下が強いとも云える。その中でも、森茂夫さんの弓は独特だそうで、昔の成りだし、握りの位置も低く、都城の弓と比べて下が強いと云われている。
 ここから始まったのだ。
 カケから射を考えるようになり、さらに深めようとして、弓に目を向けたら、森さんや柴田さんの弓が独特だと云う者がいたりして、弓の成りが違うとはどう云う事なのか考えるようになった!!
 強い弓が矢飛びが良いのは当たり前として、弱い弓でも矢飛びが鋭い場合が有り、技術だけとは思えない何かがありそうで。
 私は強い弓を得意としている森茂夫さんの鰾弓(伸びの25kg)を使っているが、新宿の百貨店で京都の物産展があり、出店していた御弓師柴田勘十郎さんの弓製作の実演を目の当たりにし、『ワカクワ』さんの剛弓に少し肘を入れさせてもらったりした。さらには、柴田さんのお弟子さんの工房(神奈川県愛甲郡にあります)で、作業を見学しながら、弓を見せてもらったり、肩入れさせてもらったりして弓談義に興じ、並の30kgの弓の購入を決めたりした。
 手の内や取懸け、捻りなどの技術的なことは置いといて、あくまで弓の素材や成りから考えてみた。矢を放った後の振動や暴れることも、まずは無視する事とした。
 まず先に、考慮しておくことは、矢の事。
 弓と矢の関係は、弓の反発力(強さ)に対して、矢の重さで対応する。弓力に対して軽い矢は矢飛びは良いかわりに矢所が荒れ易く、重い矢は矢飛びは遅いが的中には有利に働く。釣合いとしては、会で矢が水平になり、的の直線に乗り的に達するのを良しとする。
 矢は大まかに、箆と羽根と板付き、筈で構成されるが、箆張り(スパイン)と云う撓りも矢飛びに関係するが、ここでは、無視する事とした。
 「初心者のための弓道」では、弓の力:20kgに対し矢の重さ:29g、18kgに対し28g、16kgに対し26g。
 「みんなの弓道」では、弓の力:10kg以下に対して矢の太さ:1814、13kg以下で1913or1914、14〜16kgで2014、20kg以上で2015〜2114。
 弓の反発力が強ければ、弓を押し出す力も強くなる。
 12kgの弓よりも17kgの弓の方が、矢を押し出す力が強くなるのは自明の理であろう。
 では、同じ強さの弓でも、カーボンやグラスの合成弓が、竹弓よりも矢飛びが良いと云うのはどうしてだろうか。
 竹よりもグラス、グラスよりもカーボンの方が復元力が強く、同じ成りで比べると、カーボン弓の方が矢飛びが良い。これは、弓が元に戻る速さが速いため、弦の返っていくスピードが速くなるから。
 弓の復元力が強ければ、弦の返るスピードも速くなる。
 裏反りの強い弓も矢飛びが良い。
 これは、カケから弦が離れ弓が復元していっても、さらに、弓が反ろうとしていくので、弦の返るスピードが落ちないようになる。矢所が荒れ易く、振動もあるので、竹弓なら張り込んで安定させて使う。
 また、弓の成りで、胴が非常に強いのがある。引成りも胴が残って上・下が撓るような感じになる。このような胴の強い弓も、鋭い矢飛びが出る。
 「振り子の原理」とか「慣性の法則」を憶えているだろうか!?
 物理の勉強は苦手ですが、簡単に説明すると、振り子の振幅周期は、振り子の長さが短くなればなるほど速くなる(反比例)、というのが「振り子の原理」ですね。動いている物は、急には止まらない、というのが「慣性の法則」でしたね。あと、同じ力を加えた場合、軽い方が速い、というのが「運動の法則」ですよね。
 成りは、姫反り、上成下成、握りの上下の胴を含めて5つ。それぞれが振り子と考えれば良い。振り子の重りを振出すのも、ブレーキをかけるのも、弦。一斉に、しかも瞬時に動き、止まる。そのダイナミックな連動で矢を飛ばすのだから、大した物なのだ。
 また、外側の方ほど速さを増すように、先の方を軽く柔らかくして、弓自体が「振り子運動」「鞭動作」をする事で、弦を引いていき、さらに矢を押し出すようにしている。
 スポーツの方では、充分に解析されるようになって来ているので、分かりやすい野球で対比して考えてみると面白い。
 野球の投げる動作から考えてみると、振りかぶって胸を出して肩を前に持っていき、肘を前椀より先に振出して、後から前椀を鞭のように使って投げる。この時、上体にブレーキをかけて(壁を作ると云う)、さらに前椀のスピードを増すようにする。手首もスナップを効かせて、最後までボールを押し出すように使う。

 打つ事からでも同じように解析出来るだろう。バットのスピードをあげるとか、飛距離をあげるとか!!

 「投げる」とか「打つ」とかで、検索すると面白いほど探せると思う。
 総合すると、現在の弓は、アーチェリーの影響を受け素材改革が進み、スポーツ理論をも糧にして作られているのだろう。

 いや、先人の知恵が、最初から詰っていたのだが、強い弓では、弓が壊れてしまうとか、振動が激しすぎて使えないとか、そんな事で、おとなしくさせていたのかもしれない。

 弱い弓が主流になった今だからこそ、その秘めていた部分を、大ぴらに出して来たのだ。

 強い弓を引いていた時代の教えは、弱い弓では違うと云う事もあるだろう。

 でも、弓が飛ばしてくれる。当たり前の事なんだ。
 『弓工房今井』(銘:重仁)にて六分八厘の弓を作ってもらった。
 強さ30キロ以上の強い弓だ。
 
成りは、昔の成りと言える舟底で丸い感じ、引けば半月に納まるから、都城の弓とは、全然違う。これは、鞭のように撓ることで、振動を抑えながら、遠くに飛ばすのに都合の良い構造になっている。弓に対する負担も軽いので破損しにくい。
 弓を育てながら、こっちも、模索・思考していく。どんな弓に育ってくれるのか、これからが楽しみだ。
『柴田勘十郎』は京都の御弓師である。京都成の代表であろう!! 勘十郎師のお弟子さんの『重仁』を使用しているが、『森茂夫』と並べてみると、同じ成りで吃驚したものだ!!
浦上栄著の「紅葉重ね・離れの時機 弓具の見方と扱い方」をみると、江戸成は、京弓と同様となっている。

裏反りは、『森茂夫』はしっかりあり、夏場に弦を外しておくと、20cm以上になってしまうほどだ。逆に、『重仁』は、少ないようだ!! 接着剤が鰾と合成の違いがあるからかも知れない!?

上記のように、舟底で握が下にあり、下が立っている。独特と言われるゆえんだ!! 下を踏んで、矯正しようものなら、弓を知らないって怒ってやるぞ!!

握節は押しては成らぬ握り下を持って弦を張るのが良いと言うが、握りが弓力を受けるところだから、そこを押さないで、何で下を押して弦を張る? 下を押していくほど弓が暴れるので弦を張ることが出来なくなるし・・・ ましてや、弓の成りを壊して、下が弱くなってしまう!!
・・・・・次は、『手の内のついて』考えてみようか!?